訪問看護師がきつい・大変と言われる理由は？現役看護師が悩みを解決します

訪問看護は「夜勤がないから楽」と思われがちですが、実際の負担は別のところに潜んでいます。オンコールや移動、単独での判断、家族対応や多職種連携など「きつい」「大変」と感じるのは当然です。

本記事ではしんどさの原因を11の項目に分解し、すぐ使える対策から、職場を変える判断軸と転職の進め方まで具体的に解説します。

今の職場で楽に働くコツも、無理せず環境を変える選択肢も、あなたの悩みを解決する第一歩となるでしょう。

★この記事を読むとわかること
・訪問看護師がきつい・大変な理由
・訪問看護師がきついと感じたときの対処法
・訪問看護師のメリット
・訪問看護師に向いてる人・向いていない人

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訪問看護師がきつい・大変な理由【11選】

訪問看護師とは、利用者の自宅に出向き、医師の指示のもとで看護を提供する看護師のことです。

訪問看護師が働く拠点は、訪問看護ステーションで、病院の代わりに在宅での療養生活を支える「主治医の右腕」のような存在です。

訪問看護師には病棟看護師にはない特有の「きつさ」や「大変さ」があります。以下では11の理由を具体例とともに解説します。

①オンコール対応がきついため

勤務時間外のオンコール対応は、睡眠の分断や常時「呼び出されるかもしれない」心理的緊張につながります。電話だけで完結することも多い一方、看取り期や増悪期は出動が増えがちです。

オンコール対応は、2024年度看護職員の賃金に関する実態調査では、2024年12月の平均で待機7.7回、電話対応5.0回、緊急出動2.3回（いずれも1人あたり）という結果です。

負担感は当番回数・出動率・手当・翌日の勤務調整で大きく変わるため、面接で確認しておくと安心です。

事業所によっては、オンコールは管理者が対応する、オンコールは免除できるということもあります。

②基本的に単独訪問で責任が重いため

最初の1ヶ月くらいは先輩看護師が同行してくれますが、訪問先には原則看護師1人で向かいます。

初期評価やトリアージ、医師連携の要否をその場で判断する場面があり、経験が浅いほどプレッシャーを感じやすいです。

訪問看護における臨床経験は必須ではありませんが、一般的には臨床3年以上の経験があると安心です。

③看取り・急変対応の心理的負担があるため

訪問看護師は生活の場で、利用者の最期の時間に立ち会う機会もあります。

急変時は限られた資源で初期対応し、搬送要否や家族対応を同時並行で行うため、精神的消耗が大きくなります。

④利用者や家族との人間関係が疲れるため

病院では、ご家族の面会中に処置や指導することが少ないですが、在宅ではご家族の目の前で処置をすることが多く、プレッシャーに感じることがあります。

価値観や生活習慣が多様で、期待値のズレやどこまで関わるか等の調整が難しいことがあります。連絡頻度や要望の強さによって、心理的な負担が蓄積しやすいです。

利用者が訪問看護に対して後ろ向きであり、「来てほしくない」と言われてしまうこともあります。

⑤訪問先の衛生環境が良くない場合があるため

狭い空間や散乱物、ペット・害虫などで、清潔操作や感染対策が取りにくいケースがあります。

姿勢が悪くなりやすく、物品の安全・清潔維持にも余計な手間がかかります。

⑥運転や悪天候など移動のストレスがあるため

天候・坂道・駐車環境・道路事情に左右され、移動自体が負担になります。渋滞や駐車探しでタイムロスが出ると、次の訪問や記録にも響きます。

移動手段は自動車や電動自転車の場合がほとんどですが、地域や事業所の方針によって異なります。

⑦多職種との連携が必要なため

主治医、ケアマネ、リハ、薬局、ヘルパー、福祉用具など関係者が多く、情報共有や役割分担の調整が不可欠です。

連絡待ちや会議の負担、責任の所在が曖昧になりやすい点もストレス要因です。

⑧教育体制が整っていないことがあるため

事業所によってはOJT（実際の訪問に同行しながら覚える実地研修）やマニュアルが不十分で、同行期間が短いまま独り立ちされることがあります。

経験年数によって同行期間は変わりますが、教育体制が整っているステーションを選ぶと安心です。

⑨病院勤務よりも年収が低いため

夜勤手当がない分、総収入が伸びにくい事業所もあります。

オンコール手当やインセンティブ制度もあるため、夜勤がない割には給与水準は高いとされています。

⑩身体介助の負荷が大きいため

入浴介助・移乗・体位変換・褥瘡ケアなど、腰や関節に負担がかかる場面が多い仕事です。

住宅事情で動線が狭く、十分な福祉用具がないと無理な姿勢になりやすいのも難点です。

福祉用具が未導入の場合、ケアマネに短期レンタルを依頼すると、腰痛回避につながります。

⑪人手不足により多忙なため

需要増に対してスタッフが足りず、一人あたりの担当件数やエリアが広がりがちです。

記録・報告が後ろ倒しになり、休みにくい雰囲気やオンコール頻度の上昇にもつながります。

訪問看護師がきついと感じたときの対処法

訪問看護師がきついと感じたときの対処法を3つご紹介します。

上司に相談する

身体的な負担や利用者・家族による人間関係によって「きつい」「大変」と感じる場合は、職場の上司に相談してみましょう。

職場によっては、訪問件数やシフトの調整をすることで対処して貰える場合があります。また、状況によっては訪問先を変更してもらえる場合もあります。

休日はリフレッシュし、ストレス発散する

仕事と休日のオン・オフの切り替えがうまいと、ストレスを発散しやすいです。休日は好きなことをして過ごし、リフレッシュできる環境を作り出すことが大事です。

他の職場に転職する

「相談しても解決しない」「休職しても改善しない」場合は、環境を変えることも立派な対処法です。

他の訪問看護ステーションに転職する

他の訪問看護ステーションへ転職を考えている人は、事前に以下を確認しておくと、転職に失敗しにくいです。

オンコールの回数やインセンティブの有無は、訪問看護師の年収に直接的に関わってきます。高年収を狙うなら、事前に必ず確認しましょう。

また、運営母体がどこかによって、インセンティブや教育体制も差があるので、確認すると良いです。

母体	強み	注意点
病院・クリニック	・医師連携が速い ・急変時の受け入れ先が明確 ・教育・カンファ充実	・インセンティブ弱め ・病院都合で土日体制が重くなる場合も
単独ステーション （医療法人・民間企業）	・直行直帰が多い ・ICTが進みがち ・件数連動で収入に反映されやすい	・スタッフ数次第でオンコールが重くなる ・教育は事業所差大
介護大手・福祉法人 （デイ・施設併設）	・介護連携が強い ・生活支援寄りで土日休み確保しやすい	・医療処置比率は低めになりがち ・給与は平均並み

訪問看護以外の職場に転職する

いま感じている「何がつらいのか」（オンコール・単独判断・移動・身体負担など）を言語化し、その負担が小さい職場へ転職すると失敗しにくいでしょう。

施設	ポイント
クリニック	定時に終わりやすく、急変少なめ。教育体制は院による。
健診センター	手技はルーティン中心、土日休みも狙いやすい。
企業	健康相談・衛生管理が中心、夜勤なし。
治験コーディネーター	スケジュール管理・説明業務が主、身体負担は軽め。
保育園・学校	保健教育、季節変動はあるが安定運用。基本は土日休み。

訪問看護をやめる＝キャリアの後退ではありません。自分に合う環境に移すことが、看護師として長く働くいちばんの近道です。

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訪問看護師に向いてる人・向いていない人

訪問看護師には向き不向きがあるため、転職するか迷っている人は自分が向いているのか確認してみましょう。

訪問看護師に向いてる人

訪問看護師に向いてる人の特徴

①コミュニケーション能力が高い人

訪問看護師は、利用者や家族と話す時間が長いため、「コミュニケーション能力が高い人」、「人と話すことが好きな人」が向いています。

また、訪問看護師は、利用者・家族と主治医・ケアマネ・ヘルパーなどの多職種をつなぐ役割があります。

採用面接では、実体験を交えて積極的にコミュニケーション能力をアピールしていきましょう。

訪問看護師に向いてる人の特徴

②仕事と育児を両立したい人

訪問看護師は、日勤中心・直行直帰・時短や曜日固定が取りやすい事業所も多く、生活リズムを整えやすい働き方です。

オンコール対応は月数回ありますが、基本的に自宅で待機できますし、多くは電話対応で、出動は少ないため、負担は比較的抑えられます。

入職前に、オンコール体制の有無や出動率は確認するといいでしょう。

訪問看護師に向いてる人の特徴

③責任感があり、主体的に行動・判断できる人

訪問看護師は、最初の数カ月は先輩が同行してくれますが、そのあとは基本ひとりで行動します。

バイタル・全身状態・生活環境から即座にアセスメントし、優先順位をつけて対応、必要時に主治医や管理者と連携を取ることが求められます。

記録・報告・連絡のタイミングも自分で考え、チームの安全を担保できる人は高い信頼を得ます。

訪問看護師に向いてる人の特徴

④一人ひとりに寄り添った看護がしたい人

訪問看護師は、病院ではなく「生活の場」で、その人らしさを支えます。

1回の訪問は30～90分と限られますが、長期間1人の利用者さんとそのご家族だけにじっくり向き合うことができるという特徴があります。

訪問看護師に向いてる人の特徴

⑤体力があり、移動を苦痛に感じない人

自転車・車・徒歩での移動、物品の持ち運び、悪天候など、地味に体力を使います。

また、在宅という限られたスペースでのポジショニングや感染対策も集中力を要するため、基礎体力が高い人は向いています。

移動時間を、次の訪問の段取り時間に変えられる人はさらに強みになります。

訪問看護師に向かない人

訪問看護師に向かない人の特徴

①急性期医療に携わっていたい人

訪問看護は、慢性期の疾患管理や在宅リハ、生活支援が中心です。状態の落ち着いた方が多い在宅では、療養上の世話の割合が高いです。

集中治療や高度機器を使う処置、頻回の急変対応といった急性期の対応を求める人には物足りなさを感じやすい領域です。

急変対応などのスキルを伸ばしたい志向とはミスマッチになりがちです。

訪問看護師に向かない人の特徴

②指示待ちで単独判断が苦手な人

訪問看護師は、バイタルや生活環境から即時にアセスメントして、必要時に主治医へ報告するという自律した判断が欠かせません。

指示がないと動きづらいタイプだと初動が遅れ、利用者の安全や安心に影響が出やすくなります。

今までは訪問看護師は臨床経験3年以上が求められていましたが、最近は教育体制が整っており、経験が浅くても働くことができます。

訪問看護師に向かない人の特徴

③生活空間に入ることへ強い抵抗がある人

在宅は匂い・ペット・家族の価値観など病院外のリアルに向き合う仕事です。

衛生状態や居住環境が理想どおりではない場面でも、フラットに関われることが重要です。潔癖症などで強い抵抗感があると関係づくりが難航します。

訪問看護師に向かない人の特徴

④夜間の電話や緊急呼び出しが耐え難い人

多くの事業所でオンコール体制があり、夜間の相談対応や出動が発生します。

睡眠の分断や突発対応に強いストレスを感じる場合、心身の負担が蓄積しやすいです。

訪問看護師に向かない人の特徴

⑤スケジュール管理が苦手な人

訪問看護は、当日キャンセル・緊急差し込み・渋滞や天候などイレギュラーなこともあり、予定通り回れないこともあります。

訪問順や移動時間の見積もり、記録時間の確保といった計画性が欠けると、遅延が連鎖して全体の品質と信頼を落としかねません。

訪問看護師はきついけどメリットもある

訪問看護師は大変なこともありますが、メリットもたくさんあります。

夜勤がないのに年収が高い

日本看護協会『2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査 報告書』によると、訪問看護師の平均給与は以下の表の金額となっております。

	平均基本給与月額	平均税込給与総額	平均賞与	平均年収
訪問看護師	28万46円	38万3,262円	94万9,091円	549万8,716円
看護師全体	28万6,390円	40万3,012円	114万7,093円	571万8,813円

訪問看護師の平均年収は約550万円であり、看護師全体の平均年収571万円よりも約20万円低くなっています。

訪問看護師は夜勤手当がなくなる分、年収がやや下がってしまいますが、夜勤手当がない割には高い給与水準と言えるでしょう。

夜勤がないのに訪問看護師の年収が高い理由は、需要が強く、インセンティブ（件数連動）＋オンコール手当＋各種加算が乗りやすいからです。

訪問看護師の年収の詳細については、以下の記事をご覧ください。

一人ひとりとゆっくり向き合うことができる

利用者一人ひとりとゆっくり向き合って看護ができるのも訪問看護師の魅力の一つです。1回の訪問は30〜60分が目安です。

生活環境や家族背景まで含めて継続的に関わるため、変化が見えやすく、やりがいにつながります。

急性期の流れ作業になりにくく、観察・説明・支援をマンツーマンで丁寧に届けられます。

夜勤がないから生活リズムが崩れにくい

訪問看護師は日勤中心の勤務となります。睡眠リズムが整いやすく、体調管理や家族時間を確保しやすいのが利点です。

オンコール当番はあっても、回数や出動率の設計次第で負担を抑えられるため、夜勤明けのような大幅な体力消耗が続きにくい働き方です。

夜勤がないため、育児やプライベートと両立しやすいです。

土日休みが多い

訪問は平日需要が中心のため、土日祝は休みにしている事業所が多いです。

カレンダー通りの生活を組みやすく、行事や保育園・学校との両立にも向きます。

看取りや緊急対応で土日出勤が発生しても、代休・手当で調整される運用が一般的です。

直行直帰ができる

朝は自宅からそのまま1件目へ直行、最終訪問先から直帰ができる体制の事業所が増えています。

移動と記録をモバイル端末で完結できれば、事務所往復のロスや残業が減りやすく、生活時間を確保しやすいのがメリットです。社用車・電動自転車・ガソリン代や駐車場などの支給条件も整っていることが多いです。

訪問看護師のきつさは事業所によって異なる

訪問看護といっても「在宅訪問看護」と「施設への訪問看護」2種類あり、それぞれきつさが違うため、自分に合った事業所を選びましょう。

在宅訪問看護

在宅は、利用者の「生活の場」そのものに入って看護します。看護師は基本的に1人で訪問し、観察・判断・処置・記録・家族への説明までを完結させる場面が多く、判断の重さや心理的負担も伴います。

また、利用者だけではなく家族へ説明・指導する場面が多いため、高いコミュニケーション能力が求められ、人間関係で悩むケースもあります。

移動は天候・渋滞の影響を強く受け、ストレスに感じることもあります。

自律的に動ける人、家族教育や関係調整が得意な人には向いています。

施設への訪問看護

施設（有料老人ホーム・グループホーム等）への訪問は、同一建物内で複数の部屋を回るスタイルが中心のため、移動が少ないのが特徴です。

施設内では利用者の家族と関わることは少なく、業務に集中しやすいです。

在宅訪問看護と比べて、設備が整っており、効率よく業務が行えることも施設ならではのメリットです。

チームプレーや時間管理が得意な人に向いています。

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まとめ

訪問看護がきついのは、単独判断・生活の場・24時間対応が重なるからです。

本記事では11の理由と対処法を提示したので、現在訪問看護師がきついと感じている人は試してみてください。

転職前の見学では同行期間・オンコール条件・1日の件数を数字で確認することが無理なく続けるポイントです。