看護師の退職理由は、どのように伝えると円満退職や採用につながるのでしょうか？上司に退職意思を伝えるときと、面接時に退職理由を述べるときに分けて、それぞれ解説します。
人間関係・待遇面などわざわざ伝えないほうが安全な理由もあるため注意しましょう。ポジティブな理由をプラスすることで誠実さが増します。
ホスキャリコ（現役看護師）私が経験した実例も踏まえて、看護師の退職理由の伝え方について解説していきます。
★この記事を読むとわかること
・上司に伝える退職理由（例文あり）
・面接で伝える退職理由（例文あり）
・退職理由を伝えるときのポイント
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看護師の退職理由は「結婚」「子育て」が多い
厚生労働省の「看護師等の確保を巡る状況（p.14）」によると、看護師の退職理由はライフステージと密接に関わっている傾向があり、「結婚」「子育て」「転居」が多いです。
20代の退職理由では他の年代と比較して、「自分の健康」が多く、50代では「親族の健康・介護」が多いといった特徴があります。
| 看護師の退職理由 | ％ （人数） | |
|---|---|---|
| 1位 | 結婚 | 11.6 （7,494） |
| 2位 | 子育て | 10.5 （6,807） |
| 3位 | 転居 | 9.1 （5,898） |
| 4位 | 妊娠・出産 | 8.8 （5,660） |
| 5位 | 自分の健康（主に身体的理由） | 7.4 （4,763） |
| 6位 | 看護職の他の職場への興味 | 7.2 （4,666） |
| 7位 | 親族の健康・介護 | 6.7 （4,303） |
| 8位 | 配偶者の転勤 | 6.5 （4,220） |
| 9位 | 勤務時間が長い・超過勤務が多い | 5.4 （3,482） |
| 10位 | 夜勤の負担が大きい | 4.9 （3,173） |
上司に伝える退職理由【例文あり】
看護師は人手不足のことが多く、上司に退職意思を伝えても引き止めに合う可能性が高いです。すべて本音で話すのではなく、引き止めづらい退職理由を伝えるといいです。
ホスキャリコ（現役看護師）前職で上司に退職の意思を伝えたところ、時短勤務や休職の提案があり、すぐには受け入れてもらえませんでした。
以下では退職理由別に、いくつか例文をご紹介します。
【理由①】結婚
このたび結婚することになりました。仕事を継続することも考えたのですが、家庭に入って家族を支えたいという気持ちが強いため、退職させていただきたいと思います。
結婚は比較的受け入れられやすい一方で、最近は共働きも増えているので、引き止めに合う可能性もあります。
プライベートの詳細を説明する必要はないので、「家庭に専念したい」という強い意志を伝えましょう。
ホスキャリコ（現役看護師）前職では、結婚をきっかけに退職される方が目立ちました。配偶者の転勤や通勤時間の増加など、生活が大きく変わる事情が重なるケースが多かったです。
【理由②】出産・育児
いつも夜勤免除や時短勤務などご配慮いただきありがとうございます。
仕事と育児を両立させたいと思っていたのですが、体力に自信がなく、また子どもが小さいうちは自宅で子育てに専念したい気持ちが強いため、退職させていただきたいと思います。
出産や育児などの家庭事情は、受け入れられやすいです。夜勤や急な呼び出しが難しいこと、産休・育休や時短も検討したうえで退職したいと伝えるとより誠実です。
また、妊娠や育児を理由に働き方に配慮してもらっていた場合は、感謝の気持ちも伝えましょう。
【理由③】転居
こちらで仕事を続けたいと思っていたのですが、夫が〇〇へ転勤することになったため、一緒に引っ越すことを考えています。そのため、◯月までに退職させていただきたいと思っています。
転居により通勤圏外となるため、勤務継続することが難しくなってしまいました。◯月には引っ越すため、◯月いっぱいで退職させていただきたいと考えております。
転居により通勤時間が長くなるという理由は、引き止められにくいです。具体的な数字が効くため、片道の所要時間や乗り換え回数などを伝えるといいでしょう。
【理由④】スキルアップ・他分野への関心
3年間小児科を経験し、小児看護を専門的に行っていきたいという意思が強くなってきました。この経験を生かし、さらにスキルアップするため小児医療センターへの転職を考えているため、退職させていただきたいです。
認知症の患者さんを受け持つ機会が多く、この領域のプロとして知識やスキルを磨いていきたいと思うようになりました。
今後は認知症看護の認定看護師の資格取得を目標としており、より専門性の高い環境に行きたいため、退職させていただきたいと思います。
スキルアップは前向きな理由ですが、院内異動で代替できると引き止められやすいので、「やりたい分野」「必要な症例や教育」「現部署では満たせない」の三点を短くそろえます。
「スキルアップしたい」とだけ抽象的に伝えると、「辞めるためになんとなく言ってるだけ」と見透かされてしまいます。
【理由⑤】体調不良（身体的・精神的）
最近体調不良が続いており、受診したところ〇〇と診断されました。当面は治療・療養を優先する必要があるため、退職させていただきたいと思います。
現状の体調では、夜勤や急変対応を含む職務を安全に遂行できるか不安です。休職も含め検討したのですが、ご迷惑をおかけしてしまうと思うので、退職させていただきたいと思います。
病気や体調不良による退職は、やむを得ないとされ受け入れられやすいです。病院を受診している場合は、診断書も併せて提出するとスムーズに退職できます。
休職を提案されることもありますが、今は治療に専念するために退職したいということをはっきり伝えましょう。
ホスキャリコ（現役看護師）前職では、体調不良で退職を申し出るとまず休職や時短を提案されることが多くありました。休職してそれでも改善しない場合は退職するという流れも一つの手です。
【理由⑥】人間関係
以前から病棟の人間関係が複雑で悩んでいました。働き方を見直した結果、もともと興味のあった在宅看護に挑戦したいと思い、退職させていただきたいと思います。
職場の人間関係に悩んでおり、チームで仕事をするのが難しく感じています。私なりに努力したのですが、なかなか改善できず、これを機に以前から興味のあった緩和ケアの領域を学びたいと思い、転職を考えています。そのため、◯月で退職させていただきたいと思います。
人間関係の不満や愚痴をこと細かく伝えるのはNGです。マイナスな印象を与え、退職まで居づらくなってしまいます。また、チームや病棟の異動を提案され、引き止められる可能性もあります。
人間関係が原因の場合は、プラスで退職したらやりたいことについても触れると説得力が増します。
【理由⑦】待遇への不満（残業・休日・給与など）
最近夜勤に加えて時間外労働も多く、体力的に厳しいと感じることが増えてきました。自分なりに働き方を見直した結果、以前から関心のあった訪問看護の領域に挑戦したいと思ったため、退職させていただきたいと思います。
長時間勤務や夜勤負担が続き、家庭との両立が難しくなっています。この職場での経験を活かして、夜勤のないクリニックで働きたいと思っています。そのため◯月に退職させていただきたいと思います。
待遇への不満だけ伝えるのはやめましょう。残業や夜勤を減らす、給料を上げるなどの対応をされると退職する理由がなくなってしまいます。
また、改善も一時的なものにとどまり、「待遇を良くしたんだから頑張れ」とプレッシャーが掛かったり、かえって辞めづらくなる場合もあります。
待遇の不満も伝える場合は、その他の理由を組み合わせることをおすすめします。
面接で退職理由を伝えるときのポイント
面接官は、前職と同じ理由で退職するリスクがないか、また仕事に対する姿勢を確認するために、退職理由を問います。以下に退職理由を述べるときのポイントを4つご紹介します。
ウソをつかない
事実を短く、そのまま伝えるのがいちばん安全です。盛ったり話を伏せすぎたりすると、職務経歴書・面接での発言のどこかで矛盾が出ます。
言いにくい内容は詳細を語らず「家庭の事情」「主治医の指示があり当面は療養を優先」など、事実ベースで言える範囲にとどめれば十分です。
人間関係や給与面などの不満はNG
人間関係や待遇面での不満の列挙は他責に聞こえ、悪い印象を与えます。代わりに、求める環境や働き方へ言い換えましょう。
「忙しすぎた」ではなく「看護に集中できる環境で働きたい」、「給与に不満」ではなく「スキルに見合う評価制度のもとで成長したい」と表現します。
退職理由に一貫性を持たせる
複数の職場を経験している人ほど、各職場での退職理由をその場しのぎの別々の話にせず、一本の軸（目的や事情）が通ったストーリーとして説明するようにするといいです。
面接官は「この人は同じ理由で環境を整えようとしてきたのか」「たまたま起きた出来事を都度の不満として語っていないか」を見ています。
ばらばらに「人間関係→給与→忙しい…」と並べるよりも、「在宅分野へ進みたい」「日勤中心で長く働きたい」「通勤圏内に生活を移した」など、共通する軸で一貫して語るほうが信頼されます。
面接では志望先の病院は「御院（おんいん）」、文面では「貴院（きいん）」と表記します。訪問看護ステーションは会社組織のため、面接では「御社（おんしゃ）」、文面では「貴社」とします。
面接官に伝える退職理由【例文あり】
上司に伝える退職理由は本音に近い内容でも大丈夫ですが、面接では伝えなくても良い場合もあります。
以下では、退職理由別に面接時に伝える退職理由の例文とそのポイントをまとめました。
体調不良・人間関係・待遇への不満は面接で伝えるのは避けたほうがいいです。
【理由①】結婚
結婚を機に一度退職しましたが、いずれは看護師として復帰したいと思っていました。新生活も落ち着き、夫の協力も得られるようになったので、前職の経験を生かせる御院で働かせていただきたいと思っております。
結婚を機に生活リズムが変わり、夜勤中心では長期的な両立が難しいと判断しました。日勤中心でも急性期経験を生かせる御院で、継続的に力を発揮したいと考えています。
結婚を理由に退職した場合は、また働けるようになった理由を説明します。
また、妊娠や出産の予定を聞かれることもあります。
本来はこのような質問はあまり良くないのですが、妊娠・出産によりすぐに退職されたり産休に入られると困るため、確認されることも少なくはないです。
もし面接で聞かれたら、「しばらく予定はありません」「今年度は考えていません」などと答えるといいでしょう。
【理由②】出産・育児
出産後、夜勤や長時間勤務が難しく、育児と仕事を両立するため転職を決めました。育児支援制度と〇〇科の教育体制が整う御院で、長く働きながら成長したいと考えています。
前職は子育てに専念したいため退職いたしましたが、いずれまた看護師として復帰したいと考えていました。現在、子どもは保育園に預けることが決まったため、前職の経験を活かせる御院を志望いたしました。夫は在宅勤務のため、子どもの急なお迎えにも対応してもらえます。
出産や育児を理由に退職した場合は、また働けるようになった理由を述べましょう。
小さなお子さんがいる場合は、発熱などで急に欠勤や早退が必要になることがあります。配偶者や両親などのサポート体制があるなら、面接で伝えておくと安心感につながります。
【理由③】転居
夫の転勤を機にこちらに引っ越してきたので、前職は退職せざるを得ませんでした。新しい生活にも慣れてきたため、御院で前職の経験を生かしたいと思っています。
転居によって通勤時間が大きく延び、夜勤前後も含め通勤が現実的ではなくなったため退職に至った旨を伝えましょう。
配偶者の転勤による転居なら、「当面は転勤予定がなく、長く勤務したいと考えています」と一言添えると、安定就業の意欲が伝わります。
【理由④】スキルアップ・他分野への関心
将来的に認定看護師（例：緩和ケア・がん薬物療法）を目指しており、必要な症例経験を積める環境を探しています。院内異動では要件を満たせなかったため、御院でスキルを伸ばしたいです。
急性期で学んだ基礎を土台に、訪問看護の専門性を深めたいと考えました。御社は症例の幅と教育プログラムが充実しており、スキルアップに最適だと考え志望しました。
スキルアップや他分野への関心による退職理由は志望動機とつなげて答えやすいです。志望動機と退職理由がほぼ同じ場合は、「先程お話したことと重なりますが…」と一言あると、より丁寧です。
前職では経験できなかったため退職し、貴院を志望したことをアピールしましょう。
ただし、経験したい分野が狭すぎる場合、希望の科へ配属できないという理由で不採用になることもあります。「〇〇に興味があるが、今は幅広く学びたい」と伝えるのがおすすめです。
【理由⑤】体調不良（身体的・精神的）
一時的に体調を崩し治療に専念するため前職を退職しましたが、現在は主治医の許可が出ており就業に問題ありません。再発防止として〇〇に配慮し、御院に長く務めたいと思っています。
メンタル面の不調で環境を整える必要があり退職しました。カウンセリングと生活リズムの見直しで改善しており、業務上のセルフマネジメントも確立できたため、長期的に貢献したいと考えています。
退職理由が体調不良や病気の場合は、他の理由を伝えたほうが安全です。
面接官は長く務めてくれる人を採用したいため、体調不良を理由にすると「またすぐに辞めてしまうのでは？」と思われる可能性が高いです。
どうしても話さなければならないときは、「今は完治しており問題なく働ける」「主治医の許可が出ている」ということをアピールしましょう。
【理由⑥】人間関係
人間関係のトラブルを退職の理由に挙げるのは避けましょう。
「本人にも原因があるのでは？」「コミュニケーションが上手く取れない人なのかも」など協調性や性格に問題があると見られてしまうこともあります。
もし、前職の人間関係について尋ねられた場合は、不満や愚痴は述べないように気をつけましょう。
前職の人間関係は複雑で退職する方もいましたが、私は大きなトラブルに巻き込まれることはありませんでした。仕事をするうえで、積極的にコミュニケーションを取ることや協調性は大事だと考えています。
【理由⑦】待遇への不満（残業・休日・給与など）
前職の急性期病棟では、入院期間が数日で患者さん1人に関わる時間が短く、慌ただしい日々を過ごしていました。回復期の御院では、長期間患者さんを支えることができると思うので、魅力を感じて志望しました。
忙しさや待遇への不満は、面接で伝えるのは避けたほうがいいです。
「すぐに不満を言いそう」「仕事のやる気を感じられない」とマイナスな印象を与えかねません。
また、「患者さんにゆっくり向き合いたい」という表現は、「楽に仕事をしたい」と受け取られることがあるため、避けましょう。代わりに、「長期的に患者さんを支えていきたい」などと言い換えるのがおすすめです。
看護師の退職についてよくある質問
看護師の退職についてよくある質問とその答えをまとめました。
- 新卒1年目や短期間での退職理由はどのように伝えればいい？
-
短期間で辞めた場合、面接官は「またすぐに辞めてしまうのではないか」と感じる可能性があります。そのため、前職で何を学び、新しい職場ではどのように生かすのか具体的に伝える必要性があります。
- 上司に退職を伝えるのに適したタイミングは？
-
まずは就業規則を確認しましょう。上司には3ヶ月前に伝えると、余裕を持って引き継ぎなどの退職に向けた準備ができます。
退職の流れや円満に退職するコツは以下の記事を参考にしてください。ホスピタキャリア
看護師の退職は何ヶ月前に伝えるべき？円満退職する方法を現役看護師が徹底解説 | ホスピタキャリア 看護師の中には、今の職場を退職したいと考えている人もいるのではないでしょうか。 「退職は何か月前に伝えるべき？」と迷ったら、まず就業規則を確認しましょう。法律上…
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まとめ
退職理由は「結論を短く」「事実で支える」「前向きな意図で締める」の三段で十分伝わります。
上司へは引き止めにつながりやすい点を見越して、退職後に挑戦したい領域を添えると受け入れてもらいやすいです。面接では不満の羅列は避け、学びと今後の活かし方を具体的に語り、志望先の体制や理念へ自然に接続しましょう。
あなたの事情を丁寧に言葉にすれば、退職は「逃げ」ではなく次の一歩として伝わります。
